※平行ニコルの顕微鏡写真:全て偏光の振動方向は画像の左右方向(⇔)

テフロ石 tephroite [戻る
Mn2SiO4


斜方晶系 
二軸性(−),2Vx=70°前後(Feが増えると2Vx=40°程度まで変化する) α=1.770〜1.788 β=1.807〜1.810 γ=1.817〜1.825 γ-α=0.040〜0.045 (光学性は通常の苦土かんらん石とほぼ同じ


色・多色性/ほぼ無色で多色性はない。

形態/
他形粒状で,それが集粒状をなすこともある。

へき開/通常はほとんど認められないが,弱いへき開が(0 1 0)に見られることがある。

消光角/時に見られる(0 1 0)のへき開線に対し直消光。

伸長/他形が多く規定できない。

双晶/
時に(0 1 2)などの双晶が存在し,消光状態で認められることがある。

累帯構造/しばしばMn⇔Feなどの置換による累帯構造があるが光学的には確認しにくい。

産状:通常の造岩鉱物としては産しないが,花こう岩による接触変成作用を受けた層状マンガン鉱床にバラ輝石などとともに多量に産し,マンガン資源となる場合もある。石英とは共生しない。


花こう岩による接触変成作用を受けた層状マンガン鉱床中のテフロ石
Tp:テフロ石,Rd:バラ輝石,Ph:金雲母,Rc:菱マンガン鉱
テフロ石は光学的には通常の苦土かんらん石とほぼ同じで,クロスニコル下ではカラフルな干渉色を示し,他形粒状。バラ輝石(干渉色は1次の灰〜黄色程度)と共生することも多いが,ケイ酸に不飽和な条件ででき,石英とは共生しない。バラ輝石を伴わずに,アレガニー石などの一層,ケイ酸に不飽和な鉱物組み合わせで産することもある。この画像の金雲母はややBa・Mnを含み,無色〜淡黄褐色の多色性を示し,通常の金雲母より干渉色はやや低く1次の黄〜赤色程度(K・Si⇔Ba・Alの置換が進むと木下雲母といい,干渉色が低くなる)。時々,変成した層状マンガン鉱床にはSr・Ba・Vなどの鉱物が副成分的に含まれ,これは源岩の層状マンガン鉱床がそれらの元素にやや富むためである。
テフロ石は接触変成作用の還元環境下でMnが+2価の安定条件でできやすく,ブラウン鉱などの+3価のMn鉱物とはほとんど共生しない(一方,高圧型の広域変成作用を受けた層状マンガン鉱床ではブラウン鉱や紅れん石が主で,テフロ石はあまり産しない)。




肉眼で見た接触変成作用を受けた層状マンガン鉱床中のテフロ石(緑灰色:Tep)
石英(Qz)と共生せず,その間には桃色のバラ輝石(Rh)などが介在し,しばしば暗褐赤色のアレガニー石(Ale)などの著しくケイ酸分に乏しい鉱物と共生する。